独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
気がつけば夕闇がガラスの向こうに広がり、橙色と濃い青が混ざりあっていた。何も遮るものがない窓からは一面の空が広がる。思わず見惚れていると、彼が私に声をかけた。
「悪い、橙花。随分遅くまで付き合わせてしまった」
いつもと違う、ほんのすこし後悔しているような口調に私は慌てて振り返る。
「いえっ。私がお手伝いさせてほしいとお願いしたのだから気にしないでください。それより、お腹空きませんか? よかったら何か作りますが……」
おずおず口にすると彼が驚いたように片眉を上げた。敬語をやめろと言われてもそう簡単には直らない。
「いや、冷蔵庫には何も入ってないと思うからいいよ。橙花も疲れただろ? 今日は何か食べに行こう」
「私は大丈夫ですけど……それよりも冷蔵庫には何も入ってないってどういうことですか? 普段何を食べているんですか?」
聞き捨てならない台詞に素早く問い返す。
「食事は外で済ませることが多いから……」
紅茶色の瞳がわずかに動揺のためか揺れ動く。
「……まさか、面倒になって食べてなかったり?」
私の低い声に気がついたのか、彼が小さく目を泳がせる。
その反応を肯定ととらえた私は彼を睨む。
ソファに座ったままこっちを見ている彼と、窓際に立っている私の間には少し距離がある。
無言で私はリビングを横切って、キッチンに向かって冷蔵庫を開ける。
大きめのいわゆるファミリータイプのボルドー色の冷蔵庫は表面も艶々でまるで新品のようだ。そして肝心の中身は数本のアルコール飲料や水のペットボトル、缶コーヒーといったものくらいしか入っていなかった。
ものの見事に何もない。
「悪い、橙花。随分遅くまで付き合わせてしまった」
いつもと違う、ほんのすこし後悔しているような口調に私は慌てて振り返る。
「いえっ。私がお手伝いさせてほしいとお願いしたのだから気にしないでください。それより、お腹空きませんか? よかったら何か作りますが……」
おずおず口にすると彼が驚いたように片眉を上げた。敬語をやめろと言われてもそう簡単には直らない。
「いや、冷蔵庫には何も入ってないと思うからいいよ。橙花も疲れただろ? 今日は何か食べに行こう」
「私は大丈夫ですけど……それよりも冷蔵庫には何も入ってないってどういうことですか? 普段何を食べているんですか?」
聞き捨てならない台詞に素早く問い返す。
「食事は外で済ませることが多いから……」
紅茶色の瞳がわずかに動揺のためか揺れ動く。
「……まさか、面倒になって食べてなかったり?」
私の低い声に気がついたのか、彼が小さく目を泳がせる。
その反応を肯定ととらえた私は彼を睨む。
ソファに座ったままこっちを見ている彼と、窓際に立っている私の間には少し距離がある。
無言で私はリビングを横切って、キッチンに向かって冷蔵庫を開ける。
大きめのいわゆるファミリータイプのボルドー色の冷蔵庫は表面も艶々でまるで新品のようだ。そして肝心の中身は数本のアルコール飲料や水のペットボトル、缶コーヒーといったものくらいしか入っていなかった。
ものの見事に何もない。