独占欲強めな御曹司は、ウブな婚約者を新妻に所望する
私は盛大な溜め息を吐いてリビングに戻り、彼の前に仁王立ちになる。
「きちんと食事をとらなくてはダメです! 煌生さんが多忙なのはわかります。でもだからこそきちんと食べてください! もう、今日は私が簡単なものを作りますから! 近くにスーパーはありますか?」

一気に捲し立てる私に呆気に取られた煌生さんが、頷きながら話す。
「ここから徒歩五分くらいの場所にある」
「買い出しに行きます!」

言うやいなや、バッグをもって踵を返した私の右腕を彼が掴んで立ち上がる。そのまま私の右肩を、するりと抱き寄せる。

「俺も行く」
「い、いいですよ! 仕事をしていてくださいっ」
あまりの近い距離に、今までの剣幕を忘れてドキドキしてしまう。

「ダメ。暗くなってきて危ないだろ。大事な婚約者をこんな時間にひとりで外に出せない」
そう言ってフッと瞳を和らげる。そんな目は反則だ。言い返せなくなる。自分がものすごくこの人にとって大切なんじゃないかと自惚れそうになってしまう。

「ま、まだ六時前ですよ。過保護すぎません?」
恥ずかしさから茶化すように言う私の顔を、彼は至極真面目に覗きこむ。

「橙花にだけはな。大切なものは自分の手で守りたい主義だから、俺」
言われた瞬間、胸に熱いものが込み上げた。ブワッと顔に熱が溜まっていくのがわかる。

そんな私の様子を分かっているのか、彼はクスクス笑いながら私の右手をとる。
「誰にも触れられたくないし、奪われたくないんだ。わかる?」
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