結婚願望のない男
「そんなにお金がいらないなら荷物持ちでも肩たたきでもなんでもいいので、何か治療費以外のお詫びをさせてください。でないと気が休まりません。なんでもやります!今一番困っていることは何ですか!?」
ここまで来たらもはや意地になってしまっていた。人の意見を全然聞いてくれないこの人に、“うん”と言わせるにはどうしたら良いものか。私は前のめりになって言った。
「…困っていること?」
山神さんはそれこそ困ったように考え込んだけれど、ぱっと頭を上げた。何か思い当たることがあったらしい。
「…なんでもいいのか?」
はっ。
山神さんのその言葉を聞いて私は一瞬後悔した。
男の人に「なんでもします」なんて言ってしまったけれど、さすがにちょっとマズかったのでは?
「あっ!か、体で払え的なのじゃないやつでお願いします!」
「バカか。俺はそんな変態じゃねーよ」
…睨まれた。
(すごくハッキリとバカって言われた…)
「…そうだな。決して誤解しないでほしいんだが、これから頼むのは俺の趣味ではない。あと、やらしい意味もない。俺の名誉と俺の母の安心のためだと理解したうえで聞いてくれ」
「はぁ…?」
じっと真剣に見つめてくる彼の顔はやはりかっこいい。思わず見とれてしまったけれど、次の言葉でそんな邪念はどこかへ飛んで行った。
「一日だけ“レンタル彼女”やってくれないか」