僅か30センチの恋

李人「行く?」

涼美「え?」

李人「花火大会。今週の日曜日の。」

それが最大限の言葉だった。
誤解を解くには早すぎる。
というよりは、誤解を解いて
今この瞬間の幸せを
失くしたくはなかった。

スズと共に歩く遊歩道。
幼い頃に何度も一緒に散歩した
その道を醜い感情に
支配されたくはなかった。

ここは、この道は綺麗な思い出の
場所として残しておきたかった。

涼美「行かない。」

李人「そっか。」

でも、そんな場所にはならなかった。

涼美「リト。」

李人「何?」

涼美「大切にしてあげなきゃダメだよ。
彼女の事、1番大切にしてあげて。
傷付く気持ちは私が1番知ってるから。
私は彼女を傷付けたくないよ。
リトに彼女を傷付けて欲しくないよ。」

その時、俺はきちんと理解した。
ああ、そうか。
もう後戻りは出来ないんだ...と。
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