僅か30センチの恋

李人「俺の方こそすみません!」

礼子「辞めて下さい。
木山さんは何にも悪くないですよ。」

李人「俺がもっと...偉ければ...
俺にもっと力があれば...
萱島さんにそんな言葉を言わせずに
済むのに...俺が...無力なばっかりに...。」

礼子「何を言ってるんですか。
新人の頃からずっと木山さんは
うちの担当をして下さってるじゃない。
このご時世、銀行も税理士事務所も
入れ替わりが激しくてね
毎年、うちの担当が変わるのよ。
でも、木山さんは3年間
ずっと変わらず私たちを助けてくれた。
私はとても、感謝してるのよ。」

李人「...でも...」

礼子「今日はもう遅いわ。
また今度お話しましょう。
男の子とはいえ、夜道は危ないわよ。
気を付けて帰るのよ。」

優しい奥さんの笑顔に
見送られ、電車に乗り
最寄駅で降りる。
< 143 / 230 >

この作品をシェア

pagetop