僅か30センチの恋

随分前に売りに出したその別荘は
まだ買い手が見つからず
建物はそのままだけど草は生い茂り
もう叔父さんが住んでいた頃とは
別物のようだった。

涼美「懐かしいー!」

でも、スズにはそんな事、関係なくて
幼い頃、何度となく遊びに来た
あの頃のままのスズがそこにはいて
そうなると、いらっしゃいって
俺達を出迎えてくれた
護おじちゃんの姿まで
見えてくる様な気がした。

スズは迷う事なくその建物の扉を開ける。

李人「おい、スズ。やめろよ!」

涼美「まだ買われてないって事は
ここはリトのお父さんの物でしょ?」

李人「...まあ、そうだけど。」

涼美「ちょっとだけいいでしょ?」

本当に憎らしい。スズの笑顔を見ると
ダメだなんて言えなくなる。

扉を開けるとカビ臭い匂いが充満していた。

無理もない。
叔父さんが亡くなってからの
数年間、何の手入れもされてない
屋敷なのだから。
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