僅か30センチの恋

だが、清人の心情は違うだろう。
手塩にかけて育てた愛娘を李人のような
男に取られたと思うかもしれない。
その気持ちを考えると
どうしても言い出せずにいた。

自分でいうのも何だが
李人はどこに出しても恥ずかしくない
立派な人間に育ってくれた。
誰に言われるでもなく仕事を頑張り
身の回りの事は全て自分で出来る。
ずっと実家暮らしだったにも
関わらず、あいつは甘える事なく
自分の人生を生きてきた。

未熟者だと言われてしまえば
弁解の余地はない。やはりまだまだ
李人の世界は狭いものだ。
一人の人間として到底褒められるものでは
ないだろう。ただ一つ、清人に
知っておいて欲しい事がある。
李人がスズちゃんを想う気持ちは
本物だ。あいつは本気で
幸せにしたいと思っている。
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