僅か30センチの恋

李人「勘弁してくれよ...。
...本当、嫌になりますよね。
家族って何でこんななんですかね。」

おじさんはティッシュ箱を
差し出すといつもと変わらない
優しい笑顔を俺に向けた。

父「...家族...だからじゃないか。
気恥しいから面と向かっては
言えないけど...いつでも
相手の事を想ってる。
大切だと想う気持ちは
なかなか言えないものだよ。」

李人「不器用ですね、家族って。」

父「1番近くて、1番遠い。
その心地良い距離感が
あるからこそ、私たちは
毎日同じ家で生活していても
苦にならないんだ。
個々の人間としての個性を受け入れ
敬い尊重し合えるからこそ
ひとつ屋根の下で暮らせる。
私はそう思うがね。」

親父から教わる事など
もう何もないと思っていたけど
大切な事を教わった。
家族とは何か...。
そんな永久に答えの出なさそうな
問いかけの答えを教わったような気がした。
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