アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
笹野は困った。

何か言って励まして差し上げたいと思ったが、どう答えていいのかわからない。

『大丈夫でございますよ。
 姫さまは誰よりも琴も上手く、
 それはそれは美しい姫さまでいらっしゃるのですから』

そう言い続けているうちに、親戚や近所の姫たちは皆朱鳥姫を追い越し、
もうとっくに誰かの北の方となって嫁いでいる。
あるいは通いの婿がいて、子供のひとりやふたりいるのだ。

いまとなっては大丈夫と励ましたところで、空しく響くだけである。

笹野にできることは、せいぜい
「大丈夫でございますか?」と北の方の背中をさするくらいだった。



その頃、当の朱鳥は舞を舞っていた。

西の邸の奥で、女房の吹く笛の音に合わせながら。

実はもうすぐ、栄華を誇る左大臣藤原家で行われる宴の余興として、朱鳥に祝いの舞を舞うことになっているのだ。
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