アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
朱鳥が嫌がるのも無理はない。

北の方も槙大納言の悪評を知らないわけではないし、母として本当は、可愛い娘をあんな男の嫁にはしたくないとも思っている。

朱鳥は確かに変わっているところはあるが、
琴の音は心を打つと評判であるし、髪は艶やかで長く、子供っぽくはあるが器量もいい。

身内の贔屓目もあるだろうが、なによりあの無邪気な笑顔をみれば、どんな殿上人でも恋に落ちるはずだと思っている。

実際いままで、朱鳥の琴の音を聞いたとか、評判を聞いたと言って妻にしたいという話は、いくらでも聞こえてきた。

そんな訳なのだから正妻とはいかなくても、本来ならとっくに通いの婿がいてもいいはずだった。

なのになぜか、我が家には男が忍んで来ない。

来ないものはどうにもしようがない。

耳に入ってきたのは、この家は陰陽師家だからいざとなると怖いという話だが、そんな理由はかつて聞いたことがない。

もしや蒼絃がなにか?とは思ったりもするが、妹想いの兄が妹の幸せを奪うとは考えられず、原因はわからないままだ。

このままでは行き遅れて、本当に嫁の貰い手がなくなってしまう。
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