アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
それから屋内に移動して琴を聞き、図書館に寄ったりしつつ充分に楽しんだところで洸が振り返った。

「どう? 他に見たいところはある?」

「うーん。特には」

「じゃ、そろそろ帰ろうか」と、二人は連れ立ってメイン会場である講堂に戻った。

講堂にも、そこかしこに休憩スペースが設けてある。その一角に、平安装束のグループがいた。須王燎と鈴木のふたりと、彼らの婚約者である。

「ちょっと挨拶してくるね。どうする? 挨拶するだけだけど飛香も一緒に行く? バザーでも見てる?」

今度はさっきのように顔を隠す垂れ布はない。荘園の君に瓜二つの彼も、既に目元を隠してはいないようだった。

動揺しない自信はない。
本当は行きたくなかったが、いい大人なのに避けてばかりもいられないだろうとも思う。
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