アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
扉を閉める音とともに、耳鳴りでもしそうな静けさに襲われた。

その瞬間まで感じなかった不快な闇が気を重くする。

髪を拭く手をとめて、体を投げ出すようにソファーに沈んだ洸は、その闇を吐き出すように大きく息を吐いた。

――気鬱の原因は、見合いか……。

そんなはずはないと思いたいが、断ろうと考えただけで気分が軽くなる。
ということは、そういうことなのだろう。

断ろうかと、ふと思う。
たとえば今、やっぱり止めておくとアラキに言えば、少なくとも気が楽にはなるだろう。それは間違いないが、それではだめだと首を振った。

今、原因をはっきりさせておかない限り、また同じことの繰り返しになる。先送りしたところで何の解決にもならない。

唇を噛んだ洸は、チッと舌を打つ。
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