アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
そして飛香の手の甲にそっとキスをする。

「とても素敵ですよ、お姫さま」

今日は洸の母も帰ってくる。夕べの電話で母が、今夜は飛香を連れてオペラを見に行くと言っていた。『オペラに履いていったらいい、パーティだってこの前のように碧斗に連れられて参加することだってあるだろう?』
そう言おうとしたが、なぜだか口は鉛のように重たく言葉になって出ることはなかった。


スッと立ち上がった洸は、そのままリビングを出た。

扉の手前に立っていたアラキに、「お姫さまごっこだよ。また寝るから昼まで起こさないで」そう告げた。


――全てが悪夢だ。

だけど大丈夫、もう一度寝て目覚めれば、すっかり消えているに違いない。

そう思いながら洸は軽く頭を振った。
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