アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
――ここで起きたことは何なのだろう?

『だったら、その靴を履いて、僕の隣に立ってみる?』

西園寺洸はどういう意味で、あんなことを言ったのだろう?

まるで何かを刻む烙印のように、洸の唇の感触が手の甲に残っている。


「少しホームシックになってきました」
ついそんなことを言ってしまうほど、早く家に帰りたいと本気で思った。

「子供みたいですよね、すみません」

「お茶、わたしもご一緒させてもらってよろしいですか?」

「あ、はい、もちろんです」

最初からそのつもりだったのか、トレイには予備のカップが既にある。飛香の向かいに腰を下ろしたアラキは、そのカップに紅茶を注いだ。

そして少しだけ身を乗り出し、声を落として言った。

「誰にも言いません。
 もちろん西園寺家の人々にも。

 教えて頂けませんか? 飛香さんの身に、本当は何があったんです?」
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