アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「そうでしたか」

「それにしても碧斗のやつ、あれ以来まったくメールを寄こさないんだぞ。しつこいと思ったら今度はそれだからな。何なんだ、あいつは」

クスクスと鈴木が笑う。
「飛香さんに止められているのかもしれないですね」

「ん? どうしてそう思うの?」

「いえ、ただなんとなく……」
学園のチャリティパーティでの様子からなんとなく鈴木はそう思ったが、これと言って理由を言えるものはない。

「ああいうのは、本当に困るね」

「何かあったんですか?」

「何もないんだ。一見ね。あの子は、無邪気な笑顔の中に全てを隠す」

――ねぇ、君はどう思う? 僕はね、あの子のために涙を流したんだよ。
わけのわからない悲しみの淵に立つあの子を励ますだけのためにね……。

心の中でだけ、そう言ってみた。
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