アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「手を出してご覧」
朱鳥の手を取った蒼絃は、その上に自分の手をかざす。

するとどうだろう。
朱鳥の手のひらには茶巾の形をした揚げ菓子が現れた。

「うわっすごいわ!」

「さあ、おいで。甘酒を飲みながら話をしよう」

紫の単衣に白い狩衣がよく似合うこの兄は、陰陽師だ。

朱鳥の父も陰陽師であるが、この藤原家には時折ずば抜けて優れた者が現れる。

兄の蒼絃(あおと)がそうだった。

出世にはまったく興味がなく、煩わしい権力闘争に巻き込まれることを嫌っている蒼絃は、のらりくらりと頼まれごとをかわし、その能力を隠している。

『蒼絃の能力は、そら恐ろしいほどだ』

父がそう言うのを聞いたことはあるが、
その能力とはいったいどれほどのものなのか、朱鳥には知る由もない。
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