アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
夕食後しばらくして、西園寺家には飛香の弾く琴の音が響いた。
「今夜の曲は、いつにも増して胸に響くわね」
「ええ、本当に」
西園寺夫人はそっとハンカチで涙を拭いた。
後ろに立っていたサワも、エプロンから取り出したティッシュで涙を拭う。
更にその後ろで、ただひとり涙を浮かべていないアラキは、響くその音に、昨日聞いた飛香の話を重ねていた。
『――私は、平安の都から来ました』
『どうやって?』
『平安の都での兄は、力のある陰陽師なのです』
しばらくの間、藤原飛香を邸で預かることになる。そう夫人から連絡を受けたアラキは直ちに藤原飛香について可能な限り調べた。
藤原家を信用していないわけではない。
飛香の兄は洸が幼い頃からの友人のひとりでもあり、疑う要素はなかったので、最初はあくまで念のためだった。
「今夜の曲は、いつにも増して胸に響くわね」
「ええ、本当に」
西園寺夫人はそっとハンカチで涙を拭いた。
後ろに立っていたサワも、エプロンから取り出したティッシュで涙を拭う。
更にその後ろで、ただひとり涙を浮かべていないアラキは、響くその音に、昨日聞いた飛香の話を重ねていた。
『――私は、平安の都から来ました』
『どうやって?』
『平安の都での兄は、力のある陰陽師なのです』
しばらくの間、藤原飛香を邸で預かることになる。そう夫人から連絡を受けたアラキは直ちに藤原飛香について可能な限り調べた。
藤原家を信用していないわけではない。
飛香の兄は洸が幼い頃からの友人のひとりでもあり、疑う要素はなかったので、最初はあくまで念のためだった。