アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
『私は、平安の都から来ました』

顔には出さなかったが絶句した。そのまま信じるには、あまりに突拍子もない話である。

とても事実とは思えないが、事実でないとすれば、なぜそんな嘘をつくのか。仮に本人が平安の都から来たと信じこんでいるとしても、嘘を言っているにしても、どちらにしても問題である。

かといってそれを言った時の彼女の瞳は、嘘をついているようにも異常をきたしているようにも見えなかった。

アラキはただそんなことを思い、ひとり和室で琴を弾く飛香を見つめている。


飛香は西園寺家の人々の目を一身に浴びながら、ただひたすらにわが心を旋律に乗せていた。

なぜ、秘密を正直に話してしまったのか、自分でもよくわからない。
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