アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
博物館で陰陽師の話をした時のことだ。

『式神という、陰陽師に仕える妖怪のようなものがいたそうですよ。平安時代には』

『へえー』

『あ、信じないんですね』

『うん。いたとしたら手品でも使ったんだろう』

『本当にいたらどうします?』

『うーん。そうだな、好きなところに別荘でもプレゼントするよ』

『え? ほんとうですか』

『うん。その式神の数だけ別荘を買ってあげる』

そう言って笑った彼のことだ。
恐らく真剣に言えば言うほど、大丈夫か? と真顔で心配するだろう。

彼はいい人だ。無駄に混乱させてはいけない。
アハハ、ウソですよ。思いついた冗談です。そう言って笑ってあげよう。

飛香はそう思った。

信じてもらえなくてもいいのだ。
大切な人には正直でありたいと思う、自分の問題なのだから。
膝をついて、キスをして、お姫さまと言ってくれた洸さん。

――私は皆さんが大好きです。

念じるように感謝しながら、ただひたすらに飛香は心を込めて琴を弾いた。
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