アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
飛香が琴を弾き始めて一時間ほどした頃。洸のポケットでスマートホンが揺れた。

夕食を済ませ、洸はちょうど鈴木とレストランから出たところだった。
鈴木は「では、ここで」と軽く頭を下げる。彼のマンションはそこから歩いてすぐだ。

鈴木の挨拶に片手を上げて答えながら、洸はスマートホンを耳につけ車に乗る。

『今、よろしいですか?』

「ああ、大丈夫」

『土曜ですが、レストランを予約しました。相手の方とわたしが一緒に向かいます。洸さまは、マンションから向かわれるということでよろしいですか?』

「うん」

『実は今回のことはまだ、奥さまにも旦那さまにも言っておりません。相手の方も同じです。話が進んでからお話になったほうがよろしいかと思いまして』

「ああ、そうだね」
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