アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
兄妹でも朱鳥にはそういった不思議な能力は無かった。

式神を操ったり、何かを予知するとか、悪を祓うとか。
そのどれかひとつでもいいから自分にもそんな力があったらよかったのに。

そう思うと残念でならなかったが、兄はこんな力などない方が幸せだよと言う。

『未来の不幸を知ったところで、人ができることには限りがある。
 無理だとわかってしまった時は、あきらめるしかなくなってしまう。ならいっそ、そんな未来は知らぬまま、ただ一途に信じて進むほうがいい』

そして、蒼絃は朱鳥をこう慰めた。

『朱鳥の弾く琴の音は、人の心を癒すことができる。
 舞も同じ。それは朱鳥だけが持つ素晴らしい能力だ』

誰よりも自分を理解して受け入れてくれる優しい兄。

朱鳥にとって兄の蒼絃は誇りであり、唯一無二の存在だ。
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