アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「緊張しますね。すみません、私、はじめてのことなので」

「あはは、緊張して当然ですよね。普段はこんな土曜の午後はなにをしてます?」

「農園で昼寝を」

「え?」
彼女はクスッと笑う。

「実は私、日本は久しぶりで。ここ一年ほど、フランスの田舎でのんびりと過ごしていたものですから」

「それはいい」
会話は順調だった。

気づまりもなく、何一つ問題となる陰のようなものすら見えない。

――先にあるものは完璧な家庭か……。

ぼんやりとそんなことを思いながら、洸はチラリと時計を見た。
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