アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
そのまま暫くぼんやりとしていると、微かに琴の音が聞こえてきた。

――飛香か。

着替えて和室に向かい、和室に続く客間に入るとそこには母もサワもいなかった。
ひとり、飛香が琴を奏でている。

気づかれないよう静かに椅子に腰を下ろし、飛香を見つめた。

いつになく明るい曲である。
弾いている飛香も楽しいのだろう。口元には笑みが浮かんでいる。

ふいに飛香が顔を上げ、手を止めた。

「洸さん」



「そのまま続けてて良かったのに」

「洸さんにお会いするのは、なんだか、すごく久しぶりな感じです」

「そうだね。まるで何ヶ月も会っていなかったみたいだ」

クスクスと飛香が笑う。
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