アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
その日の夜、頭痛がするといって早めに休んだ洸は、そのまま熱を出した。

シャワーを浴びたあと、エアコンが効いた部屋でしばらく裸のままぼんやりしていたのかもしれない。
だが、それにしても洸が熱をだすのは、何年ぶりの事か。

夫人も慌てて主治医をすぐに呼んだが、おそらく風邪だろうということだった。


「大丈夫ですか?」

「ああ」

アラキがタオルを変えながら、心配そうに顔を覗く。

「お見合いなんて、慣れないことをしたからかな」

「洸さま、今回の話は断りましょう」

「ごめん」

「いいんですよ。とにかくゆっくりお休みください」

見上げる天井に、『残念』と笑う飛香が浮かぶ。

――まるで僕が振られたみたいじゃないか。
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