アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
あれは冗談で言ったことで、飛香も冗談で流しだけだというのに。

飛香は二十三歳。

二十四、二十五……数えながら手を出して指を折る。
二十九は、一歳オーバーするだけだ。

ありえない。

あんな小娘に、軽くあしらわれるなんて。


ため息のまま、洸は眠りについた。

夢の中で、洸は平安貴族だった。

ある屋敷に入っていくと、歌を口ずさみながら、ひとりの姫が舞を舞っている。
青い衣から透ける、抜けるように白い肌の飛香が楽しそうに踊っている。

――飛香……。


ヒヤリと額が冷たい。
「大丈夫ですか?」
目覚めと共に、目に写ったのは心配そうに覗き込む飛香の顔だった。

「いつからそこにいたの?」

「一時間くらい前からです」
飛香はそう言いながら洸の額に手を当てた。
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