アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「お熱は少し下がったみたいですね。よかった。朝になっても下がらないようなら念のため入院っていうお話だったんです」

いつの間にか熟睡して夜は明けていたのだろう、外は明るくなっていた。
「大げさだ」と言いながら起き上がろうとすると、飛香が止めた。

「だめです! もう少し寝てなきゃ。せめてサワさんが朝食を持ってくるまでは横になっていてください」

無理に起きる理由もない。おとなしく浮かせかけた体をそのまま横たえた。

それを待ちかまえたように、飛香はまた洸の額のタオルを整える。
「こんな時に帰らなきゃいけないなんて」

飛香の瞳が潤んで見えるのはまだ熱がある証拠なのかもしれないと思いながら、また戯言が口をついて出た。
< 204 / 330 >

この作品をシェア

pagetop