アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
朱鳥の軽やかな舞を広めようとがんばったところで、朱鳥のように身軽に動ける貴族の姫など、まずいない。
見ただけで皆、音を上げるだろう。

それだけではない。
無理なことは他にもある。

舞師となるからには、まず宮中に行かなければならない。

女房装束を身に着けるだけならいいが、化粧はどうしたものか。
朱鳥の肌は透けるようにきめが細かく美しいが、その分弱い。白粉を塗ろうものなら、すぐさま赤く腫れあがってしまうのだ。

それに、女官たちの女房装束は体が動かせないほどの重ね着である。
それが正装なので仕方がないが、真っすぐに立ってすたすたとは歩かない。
動きは恐ろしく緩慢だ。

果たして、ここで伸びやかに暮らしている朱鳥が、そんな宮中での暮らしに耐えられるだろうか?

苦労の連続になることは目に見えている。

努力家で我慢強い朱鳥のことだから必死にがんばるだろうが、そんな苦労をする朱鳥を想像するのは、蒼絃には耐えられないことだった。

――唯一無二の、なによりも大切な妹なのだから。
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