アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
みるみる眉間に皺が寄り、表情が険しくなった上司を見て、クックックと鈴木が笑う。

「正直に言ったんですけどね。もしかして常務は一度もないんですか?」

「なにが?」

「誰かを好きになったこととか。もしかして初恋もまだ?」

「甘くみてもらっては困るな。僕がそんな安売りをするわけないだろう」

「それは失礼しました」

笑いながら、キリキリと睨む上司を見るうちに鈴木はふと思った。

――もしかすると彼は、誰よりも情熱的な恋をするのではないだろうか?それがどんな女性なのかは、全く想像できないが。

考えてみれば、西園寺洸の女性の好みは、ずっと謎のままである。
見た目や性格が良いことは当然だろう。だが、どんな風に良ければ彼のお眼鏡にかなうのか。
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