アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「さて、早いところ終わらせよう」

足取りも軽く席に着いた洸は、テーブルの上の書類を手に取る。間もなく真剣な目つきになり、ペンを手に取ってチェックを始めた。

コーヒーカップを片付けながら怪訝そうに上司を伺っていた鈴木も、その様子に少し安心して静かに部屋を出た。

――ん?
扉を閉める瞬間、鼻歌が聞こえたような気がして鈴木は耳を澄ませたが、扉は厚く何も聞こえない。

なにかがおかしい。

とにかく近々アラキさんに会いに行こう。いや行かなければいけない。溜め息つきながら振り返りつつ、鈴木は強くそう心に誓った。
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