アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「そうなんです。普段はさすがに表には出しませんが、常務の執務室に入った途端、あきらかに肩が下がるんです。あんな彼を見たのは多分初めてですよ」

普段から冷静な鈴木にしては、珍しく興奮気味だった。

彼が恋をしたとして、なぜ屍になってしまうのか? それが理解できない。
自分にも経験があるが、あの時は訳もわからず一方的に恋人に逃げられたからという、それなりの理由がある。

「まさか、まだ始まってもいないのに振られるわけもないでしょうし。いや、彼が振られるとは思えないが」

そこまで言ったところで、もしや、と思いついた。

「彼は……その、自分の気持ちを認められないとか?」
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