アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
鈴木が頭を悩ませていたその日から数日前。
藤原家では飛香がひとりソファーに座りテレビを見ていた。

『今年の流星群は例年になく……』
真剣な眼差しで映像を見つめていた飛香は、そのニュースが終わるとソファーから立ち上がった。

藤原家が暮らすマンションは建物自体そう大きくはないが、藤原家所有の建物だ。
下の五階までを華道藤凪流の本部で使用し、その上の内階段で行き来できる二つのフロアを住宅として使っている。
木のぬくもりがふんだんに感じられる和モダンなリビングには、美しい組子細工が施された仕切りがあり、家族それぞれの個室のほか坪庭に面した畳の和室もある。

飛香が向かった部屋は、それはとは別の小さな和室。

そこに入ると、他に誰がいるわけではないのに静かに襖を閉じた。

一輪の花が生けられている床の間にポツンと飾られた鏡の前に座ると、掛けてある布を外す。

銅でできたその鏡は、平安時代から藤原家に代々伝わっているという特別な鏡である。
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