アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
これから三ヶ月の間に、御曹司は自分の気持ちにも結論を出し、彼女との未来を願うならば、彼女を繋ぎとめなければならない。
――さて、その事実を自分から彼に伝えるべきか、それともふたりに任せるべきか。

いずれにしても、しばらくの間は見てみぬふりを貫こうと、アラキは心に決めた。
恋は、全てふたりの問題である。



その日も洸は明るいうちに帰った。

「お帰りなさいませ」

出迎えるのはメイド服の飛香ではなく、白シャツに黒いギャルソンエプロンを腰に巻いたアラキ。

わかってはいたはずだが、心が沈む。
「ただいま」
スッと手を伸ばし、鞄をアラキに預けた洸は人差し指でネクタイを緩める。

夕暮れは心寂しくなるというが、屋敷全体が火が消えたように暗く沈んで見えた。

「なんですかその物凄いガッカリっぷりは。さすがの私も傷つきますよ」
そう言いながらもアラキは、どこか楽しそうだ。

「気のせいだよ、気のせい」

「まぁ別に構いませんが、食欲はおありですか?」

「うん、まぁ普通に」

「それはよかった」
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