アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
ひとりになった洸は、電話番号のメモを手にしたまま唇を噛んだ。

それにしても、迂闊だったとため息をつく。

仮装パーティの後だ。
そろそろ結婚しようと思っているとか何とか話をした記憶があるし、しまいには『今度お見合いをしようと思ってね』そんなことまで言ったかもしれないと思い出す。

――飛香は僕のことを一体どう思っているのだろう?
もしかすると、見合いをしながら飛香を誘う軽い男だと思っているのか?

『残念!』とはぐらかされたのは、見合いの話があったからなのか?

当時の自分を呪いながら頭を抱えた洸は、今日の飛香との会話を思い返した。

『働きたいなんて、どんな心境の変化なの?』

『自立した大人の女性になりたいんです』

『自立?』

『いずれは一人暮らしもしたいし、ひとりで生きていけるようにならなくちゃ』


――飛香はそのままでいいのに。
そう思っても口には出さなかった。というよりも言い出せなかったと言うべきか。

健気な気持ちに水を差せるはずもない。
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