アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
常務室に入り扉を閉めると、洸はゆったりとソファーに腰を下ろして、にんまりと口元をゆるめた。

さて、これを聞いて鈴木はなんと言うだろうと思いながら、口に出してみる。

「飛香が好きなんだ」

鈴木は一瞬驚いたように動きをとめたが、フッと微笑むと「ええ、そうだろうと思っていました」と言う。

「いつからそう思っていたの?」

「そうですね……、もしかしてと思ったのはパーティの後飛香さんのことを常務に聞かれた時で――確信したのはメイド服の飛香さんに出迎えられた日でしょうか」

指先で頬杖を突きながら鈴木の話を聞いていた洸は、「ふーん」と頷いた。

「アラキさんがおっしゃっておりました。『恋のひとつも知らないようでは話にならない』と」

「僕はようやく一人前ってことなのか」
クックックと洸が笑う。

――だけどアラキ。そんな弱みを作ってどうしろっていうんだよ。
飛香に万が一のことがあったら、僕は西園寺だって売るかもしれないよ?

洸は笑いながら、心の中でアラキにそう問いかけた。
< 253 / 330 >

この作品をシェア

pagetop