アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
大人になった今でもその気持ちのままでいるのか、あらためて聞いたことはない。だが恐らく今同じ質問をしたら、彼は同じように答えるだろう。『本望だよ』と。

「精が出ますね。飛香さんに頼みたい用事があれば優先させますが何かありますか? ちなみに彼女は簡単な入力はもちろんですが、表計算のちょっとした関数なら普通に使いこなせます」

「そうなの?」

「ええ」

記憶と一緒に普段生活で使うことがない多くを忘れているだろうと思っている洸は意外そうに聞き返すが、飛香の実情を知っているアラキにもそれは意外だった。

平安時代にコンピュータや関数はない。飛香が平安の都から来たいう言葉を信じれば、当然何も出来ないはず。
だからその疑問をそのまま飛香に投げかけた。
『勉強したのですか?』と。

『最初は何一つわかりませんでした。でも一度やってみると、それからは出来るんです。兄に聞いてみたんですが、多分脳が覚えているからだろうと言っていました』

飛香が自分の元で働くように仕向けたのは洸のためもあるが、理由は他にもある。
可能な限り彼女の謎を知るためだ。

何しろ藤原飛香は、とてつもない秘密を抱えている女性なのだから。
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