アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「え? 物忌み?」

物忌みとは、不浄を避けて一定期間心身を清めることをいう。

急に体調が悪くなったり、家を出たものの動物の死骸に出くわしたなどなど、こういった良くないことは全て『物の怪』による仕業とされたので、それを避けるために『物忌み』をする。

でも今は、何も起きていない。
要するに嘘だ。

兄の蒼絃は、この『物忌み』を、さぼる口実に使うことが多かった。

朱鳥が弾かれたように笑う。

「兄君ったらまたそんな。私は大丈夫です。ちょっと緊張しちゃってるだけですから」

「間違ったりしても式神が上手くやってくれるから心配いらないよ」

朱鳥はにっこりと頷いて、ホッとしたように息を吐いた。

「あの、兄君?」

「ん?」

「……えっと、あの」

朱鳥にはずっと気になっていたことがある。

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