アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「――でも」

「すぐに返事がほしいとは言わない。考えてみて。碧斗にも僕から話をしなきゃいけないし。もちろんご両親にもきちんとね。返事はそれからでいい」

何かを言おうとして口を開けたものの、声を出せずにいる飛香に、念を押すように洸が言った。

「百人一首で、何が好きか聞いたよね? 今なら答えられるよ」

ほんの少し飛香の瞳が輝いた。

その輝きが消えないことを願いながら、洸はその歌を詠む。

「『あひ見ての 後の心に くらぶれば、昔はものを 思はざりけり』
今の僕は、そんな気分だ」

そう言って、にっこりと微笑んだ。

「さあ、話はおしまい。仕事の説明をするから、来て」

「あ、は、はい」
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