アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
洸が向かった先は、藤凪流本部。
飛香の自宅は上の階にあるが、訪ねる相手は今その下のフロアにいる。

「先程電話をしました、西園寺です」
既にアポをとってある。受付の女性は「どうぞこちらへと」にっこりと微笑んだ。

「西園寺さまがいらっしゃいました」

案内された部屋で待っていたのは華道藤凪流次期家元で飛香の兄、碧斗だ。
「忙しいところ悪いね」

「いや、それは大丈夫だがどうかしたか?」

電話を受けた時は、イベントか何かの話かと思っていた。催し物の企画やワークショップの話などが、今までも時々あったからだ。
だが今日の洸は、平日なのにビジネススーツではない。

だとすればアポを取ってまでここにわざわざ来る理由はひとつ。
飛香に関することだ。

事務の女性がテーブルにコーヒーを置き部屋から出て行くと、それを待ち構えたように洸が口を開いた。

「碧斗、僕は飛香と結婚したいと思っている。今日はその話をしに来た」

「随分いきなりだな」
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