アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
チラリと時計を見れば三時を十分ほど回ったところだった。

仕事に戻ろうと振り返った時、また扉がノックされた。失礼しますという鈴木の声と共に扉から鮮やかに入ってきたのは、蘭々だ。

「久しぶりね、コウ」
洸を『あきら』ではなく『コウ』と呼ぶのは、ほんの一部の親友だけである。

「ほんとだね、なんだか一年くらい会ってないような気がするよ。どうぞ座って」

「ありがとう。パーティにもほとんど行ってないし、三か月は会ってないんじゃないかしら」

蘭々はもうすぐモデルを辞めて芸能界から引退する予定でいる。と同時に西園寺ホールディングスのイメージモデルもやめることになる。今日はその挨拶やら手続きに来ていた。

「スクリーンに映る蘭々を見られなくなるのは残念だな」

「ふふ、ありがと、そう言ってもらえるのもうれしいけど、これで自由の身になれると思うと本当にうれしいわ。お祝いしてね」
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