アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「お幸せそうでなによりです」

背中を背もたれに預けてため息をつき、眉間に皺を寄せながら洸は睨む。

「それはなにか、ん? 『秋までお友だちで』と言われたことへのはなむけとでも?」

「え? お友だち?」

「ああ、僕らは『お友だち』なの」

「――それはまた……冗談みたいな話ですね」

「ああ、夢だと思いたいね」

「秋までとは、秋になにかあるのですか?」

十月の十五夜。その日、飛香は平安時代の朱鳥と会って今後どうするか話をすることになっている。というのは碧斗から聞いて話だが、こればかりは相手が鈴木にも話して聞かせるわけにはいかない。

「色々気持ちの整理をつけたいんだそうだ。それに必要な時間なんだろう」

「なるほど」

相手が自分のように無名の一般人ならいざ知らず、西園寺家の御曹司となると怯む気持ちもあるのかもしれないし、その気持ちはわからなくもない。

少なくとも藤原飛香は、恋と同時に玉の輿を狙うような女性ではないということなのだろう。西園寺洸の妻になるというシンデレラストーリーも、彼女の前では脅威ということなのか。
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