アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
これほど完璧な男でも、彼は彼なりに苦労しているのだ。
疑う余地なく前途洋々だと思いこんでいただけに、むしろ申し訳なく思った。

「なかなか上手くいかないものですね」

「まぁ、あれだ。ここで順調にいくような女の子なら惹かれはしなかっただろうしね」

それには思わず鈴木もクスッと笑った。
その発言が強がりであるという証拠に、洸はにこりともせずツンと澄ましている。

ただ、そうはいっても彼が唯々諾々と待ちぼうけをくらうとは思えない。何かしらの考えはあるだろうし、いずれにしろ彼はなんとかするのだろう。
そして、それについては自分が協力できることはないだろうし、口を出す必要もない。

――でも。

「もしかすると常務は蘭々と結婚するかもしれないと思っていました」

なんとなくそんなことを言ってみた。
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