アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
だから、荘園の君の本当の名前はわからない。
その後すぐ父に事情を話して、助けてくれた人を探してもらったが、
結局何の手がかりも掴めなかった。
当時の朱鳥はまだ裳着(もぎ、女子の成人式)も済ませていないほんの子供だった。
公達はその身なりから元服を済ませた成人には違いなかったが、目元にはまだ少年の面影が残っていた。
もしかすると朱鳥の七歳上の兄と同じくらいの年齢かもしれないと思った。
用事があり荘園行きに同行しなかった蒼絃は、何か予感がしていたらしくぎりぎりまで荘園行きを反対していたのだが、
後から事件を聞いて『無理にでも止めるべきだった』と自分を責めた。
あれから十年あまりが経つが、以来その時のことは禁句になっている。
時々思い出しては、宮中に出入りしている顔の広い兄に頼めば何かわかるかもしれないと思ったりもしたが、兄の苦痛な表情を思い出すと朱鳥は何も言い出せなかった。
――恐らく兄君は、想像すらしていないだろう。
その時の公達への淡い恋を、私がいまだに胸の中で温めていることを。
その後すぐ父に事情を話して、助けてくれた人を探してもらったが、
結局何の手がかりも掴めなかった。
当時の朱鳥はまだ裳着(もぎ、女子の成人式)も済ませていないほんの子供だった。
公達はその身なりから元服を済ませた成人には違いなかったが、目元にはまだ少年の面影が残っていた。
もしかすると朱鳥の七歳上の兄と同じくらいの年齢かもしれないと思った。
用事があり荘園行きに同行しなかった蒼絃は、何か予感がしていたらしくぎりぎりまで荘園行きを反対していたのだが、
後から事件を聞いて『無理にでも止めるべきだった』と自分を責めた。
あれから十年あまりが経つが、以来その時のことは禁句になっている。
時々思い出しては、宮中に出入りしている顔の広い兄に頼めば何かわかるかもしれないと思ったりもしたが、兄の苦痛な表情を思い出すと朱鳥は何も言い出せなかった。
――恐らく兄君は、想像すらしていないだろう。
その時の公達への淡い恋を、私がいまだに胸の中で温めていることを。