アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
そんな状況が、我ながら情けなくなる洸だったが、既に手は打ってあった。もちろん抜け目なく。

「まぁがんばれよ」

「サンキュー」

つい先日、ロンドンにいる知り合いから連絡があった。大事な貴賓を招いてのパーティがあるのだが、そこで日本的なショーを予定してのだという。ところがそのショーを頼んでいた相手が都合で来れなくなったという。思いつく幾人かに当たってみたが、その誰もかれも急な話なので予定が埋まっていて駄目だった。

聞けばそのパーティの日程は八月二十一日、洸の誕生日の次の日である。
渡りに船とばかりに早速碧斗を紹介した。

『碧斗が来てくれるならファーストクラスで渡航費はもちろん負担するし、急なお願いだからギャラも言い値で払うと言っている。彼は顔が広いし今後を考えれば無理をしても受けて損はないと思うよ』

狙い通りだった。実際碧斗のためにも良い話なので彼は引き受けた。
あとはつつがなく出発を見送るだけである。

碧斗は準備もあるので十八日の朝の便でロンドンに向かい、帰ってくるのは二十三日だという。その間、飛香はひとり。

十九日の日曜日は飛香と映画を見にいく約束をしているが、二十日が洸の誕生日であることも、休みをとっていることも飛香には言ってはいない。

それを彼女に言うのは十九日。

ーーああ、楽しみだな。
飛香とふたりマンションでディナーを囲み、あの美しい夜景を見せてあげるんだ。
< 292 / 330 >

この作品をシェア

pagetop