アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「このすぐ近くに僕のマンションがあるんだ。そっちでいい?邸だと今日はシェフがいないから厨房で迷うだろうし」

「はい。そういえばマンションに帰る時は食事はどうしているんですか?」

「前もって連絡して、冷蔵庫に入れておいてもらったり外食したり。自分では作らないからね。マンションには調理道具はあるけど、食材は何にもないんだ」

「じゃあ買っていきましょう」

目に留まったスーパーマーケットに入ると、飛香は率先してカートに買い物かごを乗せた。
「洸さん、スーパーなんて来たことないでしょう」
クスクスといたずらっぽく飛香が笑う。

「うん。そういえばないね」

陳列棚や天井やポップの文字などを店内を見回しながら歩く洸と、食材を選びに忙しい飛香は、店内で人目を引いた。
何しろ背が高く生活感のないモデルのように美しい男が女連れでスーパーにいるのである。彼らは若い夫婦なのか恋人たちなのか?
買い物をする女性たちはそっと洸や飛香の指先に視線を向け、左手の薬指に指輪をしていないことを確認して、なんとなくホッとしたりしていた。
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