アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
飛香は店員に声を掛けて、鯛を指さしながら何かを頼んだ。

「なに? どうしたの?」

「はい。自分でする自信はないので、お魚の下処理をお願いしたんです」

「へー、そんなこともやってくれるんだ」

「今うちに来てくださっている家政婦さんに、一緒に買い物に連れて行ってもらったです。その時に教えてもらったんですよ」

飛香は時々スマートホンを見ながら、食材を籠に入れていく。

「え? ワインなら買わなくても沢山あるのに」

「駄目です。洸さんのところにあるようなワインはもったいなくて、お料理には使えませんよ」

そうなの?とか言いながら、洸は早くも飛香との未来に思いを馳せて頬が緩む。

シェフに任せても飛香が作っても、どちらでも飛香が好きなようにしたらいい。時間があれば自分が手伝って二人で作ることもありだと。

「ねえ飛香、別に全部作らなくてもほら、こういうのでもいいよ」
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