アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
お惣菜のコーナーには、サラダからパーティーセットのようなものまでなんでも揃っている。

「いいえ、何にも用意ができなかったからせめてお料理くらいがんばります!」
と言いながらも飛香は足を止めた。

「あ、でもサラダだけは買いましょう」
アウトドア用だろうか、お米も一合分のものもあり、それを買った。

何故ならば野菜もお米も食材を無駄にはしたくなかったからだ。料理をしない洸のマンションに残しておいてはいけない。かといって捨てるのも忍びないし、持ち帰るのもなんとなく気が引けた。

レジに並びながら、バッグの中に入れておいたエコバッグを確認すると二つある。
――これなら、全部入るだろう。

そしてふと考えた。
食材を無駄にしたくないと思ったことや、エコバッグの持ち歩きなど、洸には全く想像も出来ない事なのではないだろうか。

時にはこんな風に、彼よりも自分の方が知っていることもあるかもしれない。
――庶民的なことに限るけど。
そう思いながら、飛香はこっそりと微笑んだ。
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