アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「家政婦さんは? 今日は来るの?」

「いいえ、日曜日はお休みして頂いてます」

「いつもは何時に来るの?」

「夕方四時頃に来てくださるんですよ。土曜日は十時頃に来て、家事以外に色々教えてもらっています」

「そう。どう? 護身術は」

「うふふ。強くなりましたよ」

「そっかー、じゃあ後で試してみよう」

そんなことを話すうち、マンションに着いた。

「ここだよ」

「え?! ここですか?」

見上げる首が痛くなる。冗談みたいに高いタワーマンションである。

「夜景がね、本当にキレイなんだ」

それはそうだろうと思いながら、飛香は洸の背中に付いていった。

平安の都で見た、淡く揺れる蛍の光を思い出す。兄の吹く横笛を聞きながら庭の川面を見つめた夏の風物詩。

でも今は、それよりも見たいと思った。

ーーこの見上げるマンションの一室から。
宝石のように輝く夜景を、前を歩く洸とふたりで。
< 298 / 330 >

この作品をシェア

pagetop