アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
そんなことを思いながら、朱鳥はチラリと兄を見た。
考え事をしているのか寝ているのか、蒼絃は瞼を閉じている。
長い睫毛が隠している切れ長の知的な瞳は、人の心を容易に掴んで離さない。
すっと線で描いたような高い鼻筋を辿ると、輪郭のはっきりした唇がより一層知的さを匂わせている。
妹から見ても、本当に見目麗しい兄だ。
だがこの美しい兄は、男女の愛とか恋というものには遠い存在である。
人としての生業というか本能とかいうものを超越したところで息をしているようなところがある。
どこかの姫のもとに通っているとか、正妻を娶るような話がでたこともないし、浮いた話を聞いたことがない。
朱鳥と並んで、母にはそんな息子も悩みの種だった。
『朱鳥はいつまでも子供のままだし、蒼絃はあんな風だし。
一体この家はどうなってしまうのでしょう』
以前朱鳥は聞いたことがある。
『兄君はご結婚とかしないのですか?』、と。
兄はこう答えた。
『さあ、どうだろう。私にもわからない。
ただ、子は成す。――らしい』
考え事をしているのか寝ているのか、蒼絃は瞼を閉じている。
長い睫毛が隠している切れ長の知的な瞳は、人の心を容易に掴んで離さない。
すっと線で描いたような高い鼻筋を辿ると、輪郭のはっきりした唇がより一層知的さを匂わせている。
妹から見ても、本当に見目麗しい兄だ。
だがこの美しい兄は、男女の愛とか恋というものには遠い存在である。
人としての生業というか本能とかいうものを超越したところで息をしているようなところがある。
どこかの姫のもとに通っているとか、正妻を娶るような話がでたこともないし、浮いた話を聞いたことがない。
朱鳥と並んで、母にはそんな息子も悩みの種だった。
『朱鳥はいつまでも子供のままだし、蒼絃はあんな風だし。
一体この家はどうなってしまうのでしょう』
以前朱鳥は聞いたことがある。
『兄君はご結婚とかしないのですか?』、と。
兄はこう答えた。
『さあ、どうだろう。私にもわからない。
ただ、子は成す。――らしい』