アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
朱鳥の舞は無事、好評のうちに終わった。

何しろ、羽衣をまとった式神が舞姫と一緒に舞うという、かつてない演目を目の当たりにしたのだ。
左大臣は大喜びで、山のような土産を並べてふたりを労った。

せっかく来たのだからゆっくりしていってほしいという言葉に甘えて、朱鳥は左大臣の広い寝殿を散策させてもらうことにした。


「一緒にいなくて大丈夫かい?」

「はい、海未(みみ)もいますから大丈夫です」

まだ少し左大臣や他の客と話をするという兄とは、『時を告げる寺の鐘が聞こえたらここで』と待ちあわせた。

権力を誇る左大臣の邸はとても広く、東と西それぞれに寝殿がある。
どちらの寝殿にももちろん北対、東対、釣殿などがそれぞれにあり、渡り廊下で繋がっている。

宴が催され、客で賑わっている東対から離れて左大臣家の女房に案内されながら、お供の女房海未と一緒に朱鳥は東北対に向かった。
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