アイラブ☆吾が君 ~恋する淑女は、十二単で夢を舞う~
「あちらは、涼しいですよ」

「ありがとうございます」

初めて目にした左大臣家は、几帳と屏風もそれはそれは見事なものばかり。
見慣れぬ眩しさに目がくらむ。

東北の対に着くと、簀の子でお菓子と甘酒を振舞われた。
氷が入った甘酒も、初めて食べるお菓子も驚くほど美味しい。

「素晴らしい舞でございました。
 もう二度と見ることができないのは、とても残念だと皆が申しております」

式神との天女の舞は、もともと今日の限りの約束になっている。

朱鳥は二度目があっても構わなかったが、兄の蒼絃は一度限りと断言する。

兄がそう言うからには必ず意味があるので、朱鳥はそれに従うだけだ。

「ありがとうございます」と微笑んでうやむやに流した。

そのまま世間話をしていると、ふいに女房が
「もうすぐ若君さまがご結婚されるものですから」と言う。
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